本記事ではDevOps(デブオプス)の意味や重要性、インフラSEやSIerの経験が重宝され求められている理由について紹介します。
DevOpsエンジニアの需要が増加し、開発と運用を一体化して素早いビジネスサイクルを実現する事が一般的となってきた背景を交え、「インフラSEやSIerの経験をどのように活かせるのか?」「どのような点が強みになるのか?」も解説していきます。
そもそもDevOpsとは?
文化・プラクティス・ツールの組合せ
DevOps(デブオプス)は Development(開発) と Operations(運用) を一体化し、リリース速度とサービス品質を同時に高めるための 文化・プラクティス・ツール の総称です。
近年ではソフトウェア開発サイクルのスピードアップが求められる一方、開発チームと運用チームが個別最適する事でサイロ化してしまい、各種システムが孤立してしまう現象が多く見られます。従来の分業制では開発チームと運用チームで見解のずれが発生する事も珍しくなく、早く高品質なソフトウェア開発を実現する事の足枷となっていました。この状況を打開する為に生まれたのがDevOpsという考え方になります。
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DevOpsの理想「DORA 4指標」が示す”速度”と”安定性”の両立
GoogleのDevOps Research and Assessment(DORA)チームが確立した「Four Key Metrics(DORA 4)」は、ソフトウェア開発チームを以下4指針で評価すると定義しています。
- デプロイ頻度(どれだけ頻繁に本番へ出せるか)
- 変更のリードタイム(コードコミットから本番反映までの時間)
- 変更失敗率(本番変更の失敗割合)
- 障害からの回復時間(MTTR:復旧までの平均時間)
DevOpsは「開発の速さ」だけでなく「壊さない」「壊しても復元が早い」ことも重要視する為、インフラエンジニアが現場で培った安定運用・障害対応の知見が「速度」と「安定性」の両立に大いに貢献します。例えば誰でも確実にデプロイできるように手順書作成やツール作成、それらの標準化を行ったり、障害発生時のリカバリ方法を検討、作成、検証する経験などはDevOpsの実務に役立つ貴重な経験となるのです。
SREがSLI/SLOとエラーバジェットで定義する”信頼性”
SRE(Site Reliability Engineering)ではサービスの信頼性を定量管理する為、SLI/SLO/エラーバジェットの3つの概念を用いています。Realiability Stackと呼ばれ、サービスの信頼性を客観的に管理するための重要な指針です。
| SLI(サービスレベル指標) | サービスの動作を直接測定したもの。ユーザー体験を表す計測指標。(例:可用率、レイテンシ、エラーレート) |
| SLO(サービスレベル目標) | SLIをもとにした目標値。システムの可用性を正確な数値目標で設定したもので社内システムの安定稼働の指針。(例:可用率 99.99%) |
| エラーバジェット | サービスの信頼性が損なわれても許容される指標。例えばSLOが99.99%の場合、エラー応答率やダウンタイムを0.01以下に抑える必要があります。 |
インフラエンジニアはRTO/RPOなどの指標を用いて信頼性や障害復旧の設計を実施した経験が豊富な為、SLIやSLO、エラーバジェットといったSREに必要な考え方との共通性を見出しやすく、容易に習得できる事が多いです。
IaCが開発と運用の協働を促進する
IaC(Infrastructure as Code)を導入する事により、DevOpsを更に加速させます。TerraformやAnsibleといった代表的なIaCツールを用いるとインフラ環境構築の簡易化、自動化を実現できます。インフラ環境の構築を短時間で行える為、開発スピードの向上と運用の効率化を実現可能です。
またアプリケーション開発と同様に変更差分管理やリリースフローの整備を行える為、コードレビューや変更管理を標準化し、迅速に行える為、インフラ環境のテストやデプロイのサイクルを早くでき、開発と運用が一体となって迅速なビジネス展開やサービス提供を実現できます。
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強み1:障害対応力がDORA指標「回復時間」へ貢献
インフラエンジニアとして培った障害対応力はDORA指標における回復時間を守る事に繋がります。監視→検知→一次切り分け→恒久対策という運用サイクルに慣れていることは、MTTRの短縮に直結します。ログの読み解き、影響範囲の即時把握、ロールバック判断などの現場経験は障害回復時に迅速な判断を実現するだけでなく、システム設計や全体最適化を行う際にも役立ちます。
強み2:安定稼働へのこだわりがSREの「SLI/SLO」へ貢献
インフラエンジニアは常に安定稼働を求められ、「システムを止めない」「止まったとしても迅速に復旧できる仕組みづくり」を命じられた経験も少なくないでしょう。それらを必死になって実現した経験はSLIやSLOを検討、設計する際に役立ちます。インフラエンジニアとしても信頼性設計の中でRTOやRLO、RPOなどを設計しますが、それらと通じる部分があります。
強み3:定型作業の経験がSREの「トイル削減と自動化」へ貢献
インフラエンジニアが取り組む定例作業の中には、パッチ適用・バックアップ・アカウント管理などの自動化や簡略化が可能な作業が多く含まれます。これらの作業を自動化したり時間短縮する経験をしたエンジニアも多くいるでしょう。この経験はSREが行うトイル削減や自動化と同等の作業になる為、そのまま実務に活かせます。
強み4:SIer向け!顧客折衝・調整力がチーム間の調整役として貢献
SIerとして顧客折衝したり、調整した経験は開発と運用の協業が必要なDevOpsにとっては非常に役立つ経験です。要件定義・合意形成・リスク説明をはじめとしたステークホルダーを調整する力は、開発チームと運用チームを橋渡しする力に直結し、技術力と交渉力を兼ね備えたDevOpsエンジニアは非常に重宝されます。
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障害対応力
障害発生してアラートから一時切り分け、暫定回避、恒久対策した経験はDevOpsエンジニアにとって役立つ経験です。エラー発生から復旧、恒久対策を行う過程において、障害対応手順の整備や回避策のナレッジ化など標準化を行う作業も必ず経験しています。中には障害復旧用の自動化ツールを作成したり、再発防止用のテンプレートを作成したりする経験もあると更に強力な武器になります。
安定稼働へのこだわり
インフラエンジニアとして信頼性や可用性を設計した経験はDevOpsエンジニアとしても必須の経験です。RTOやRPO、RLOの設計経験、ピーク時負荷を意識した性能設計、キャパシティプランニングなどの経験は SLO設計の土台になります。さらに、ベースライン性能の計測や季節性を踏まえた需要予測、SLAやOLAといったサービスレベルや運用レベル合意などの経験もSLIやSLOを設計する際に役立つ強みとなります。
定型作業の経験
定型作業の多くは手順書を利用した手作業ですが、手順書を確実に実行する力、手順書を作成して標準化する経験はDevOpsエンジニアの基礎となる力です。また定例作業をバッチやツールを作成して簡略化したり自動化する作業はIaCツールを利用してコード管理する作業に通づるものがあります。定例作業の中で自動化できそうな部分は積極的に自動化し、DevOpsエンジニアとしての基礎力をつけましょう。
調整力
本番環境の変更管理、リリース判定会、顧客報告などの実務は、DevOpsにおける開発と運用の協働に活きます。いくらコード化が進んだとは言え、DevOpsにおける開発チームと運用チームの協働には合意形成が不可欠で、短いサイクルで合意を繰り返す仕組みによって成り立ちます。ステークホルダー間で合意をとる調整力はDevOpsエンジニアとして活躍するには不可欠です。
これから身につけるべき主要スキル
クラウド:AWS/GCP/Azure
クラウド関連の設計や構築スキルは一通り習得しましょう。近年ではマルチクラウドが主流な為、何か1つを主要な軸に据えて複数のクラウドについて知識を習得する必要があります。AWSを主戦場とするエンジニアが多い為、GCPやAzureを軸に据えると穴場を狙えます。各ベンダーの上位レベル資格を獲得し市場価値を上げましょう。
IaC:Terraform/Ansible
DevOpsとしてTerraformやAnsibleを利用したIaCツールの利用スキルも必須です。OSやミドルウェア環境をコード管理し構築するスキルはトイル削減や自動化する能力に直結します。TerraformやAnsibleもベンダー資格がある為、取得すると市場価値が上がります。
CI/CD:GitHub Actions/CircleCI
CI(Continuous Integration)、CD(Continuous Delivery)も習得しておきたい手法です。IaCで扱うコードのビルドやテスト、本番環境リリースを自動化する際に必要となります。
インフラエンジニアの場合はコードリリースやバージョン管理を経験していないケースもある為、コード管理やCIツールとして一般的に利用されているGitHubやCircleCIを用いて一通りの経験を積みましょう。
コンテナ:Docker/Kubernetes
アプリケーションや実行環境をコンテナ化して利用する技術も学びたい事の1つです。Docker でコンテナ化しKubernetes でオートデプロイ、スケーリングなどを行う技術を習得します。DevOpsエンジニアは開発環境の準備や本番環境へのリリースを迅速に最適化する必要がある為、必ず身につけたい技術です。
開発経験が浅くてもIaCなら初心者も学習しやすい
プログラミング未経験でもIaCは学びやすく、以下のように簡単に学習を開始できます。
- AWSをはじめとしたクラウドアカウントを準備
- クラウド公式のCLIツールのインストール
- IaCツールをインストール
- 仮想マシンやクラウドストレージ、VPCなどのネットワークの最小構成の作成
慣れてきたらGitHubでバージョン管理をしてみたり、Ci/CDツールと組み合わせて自動でビルドやデプロイする環境を整えて、IaCのメリットを体感してみましょう。
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今すぐ無料で相談するDevOpsに関するよくある誤解とQ&A

Q. やはり「コードが書けない」と転職は無理ですよね?
いいえ。DevOpsで重視されるのは、システム全体を理解し継続的に改善する力です。手順書作成や標準化の経験があればDevOpsエンジニアとしての土台は整っています。IaCやCI/CDについては学習環境が整っている為、インフラエンジニアとしての設計構築経験や標準化経験があれば学習しながらでも転職は可能です。
Q. DevOpsエンジニアは激務だと聞きました…
DevOpsは自動化と共通化で負荷を下げる事も業務の一部です。属人的な手作業を続けると激務化しますが、トイルを削減し、アラートのノイズを減らす事で業務負荷を削減できます。鳴るべき時だけ鳴るアラート設計と、だれでも復旧できる標準手順の整備を行いワークライフバランスを実現させましょう。
Q. 自分の経験が本当に「強み」になるか自信がありません
インフラエンジニアとして設計・構築に携わった経験やSIerにおける顧客折衝経験は、信頼性・回復力・合意形成といったDevOpsエンジニアに必要な能力の土台になり、大きな強みです。
障害対応での MTTR短縮、可用率SLOの達成率、夜間アラートの削減件数、自動化による工数削減経験などの成果を定量化し、職務経歴書や面接で語れる形にしておくと、評価されやすくなります。
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DevOpsは技術寄りのキーワードに見えますが、根幹は文化と協働です。インフラエンジニアとして現場で蓄えた運用力・調整力・安定志向はDevOpsエンジニアの土台として大いに役立ちます。今の経験を元にIaC/CI/CD/クラウドの技術と結びつけ、自動化や標準化を意識していく事でDevOpsエンジニアへのキャリアに繋がります。
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